VUTAIの植栽デザインをつくりあげてくださった西畠清順氏。
そのコンセプトやVUTAIにかけた想いを伺いました。
― VUTAIの庭作りにおける、最もこだわった点についてお聞かせください。
日本全国、海外でも庭作りをする機会が多い中で、このVUTAIのお話を聞いた際、とにかくこだわったのは、“ならでは”の庭であることです。
一つ目は、この奈良の地、宇陀の地でやるべき庭は何なのかということ。もう一つは、企業の緑化などではなく、農業を営む企業の庭であり、かつ宿泊施設でもあるということです。
この土地ならでは、この建物ならでは、この二つを混ぜ合わせた庭にしたい、というよりも、そうしなければならないという感覚がありました。

― どのように設計されたのでしょうか。

その“ならでは”の要素を集めて具現化し、設計に落として、樹種を選定していく中で、「万葉」がその象徴的な部分で、一つアイコニックなコンテンツになるのではないかと。
万葉集に出てくる植物を徹底的に調べ、常緑樹もあれば落葉樹もある、高木もあれば低木もあるという中で、通常の庭作りは法則に則ってコーディネートするものなので、そのまま集めると、ガチャガチャとしたまとまりのない庭になってしまう。この20種類ほどの1本1本をどうまとめようというときに、「森」のように扱うことで、サイズ的にも景観的にも収まるように計算しました。
―この「万葉の森」のユニークさはどこにあるとお考えですか?
スケールが広すぎると体感として分かりづらく、伝わりにくい場合があります。この庭では、皆さんが通る動線のすぐ横に凝縮して作ることによって、逆にメッセージが伝わりやすくなっているのではないかと。私が知る限り、本来多様な万葉集の植物がこれほど一箇所に集まり、凝縮して作られている場所は日本にはないと思います。
―これから木々が成長を遂げていくと、どのような景色になっていくでしょうか。未来についてお聞かせください。
「万葉の森」は森というだけあり、それぞれの木はそこに植えられた瞬間に、隣に背の高い木がある、隣に常緑樹があるというのを理解します。するとそれぞれバラバラの樹種の木たちは一つの森を作るために自発的に作業し始め、共存していくような恰好になる。 設計でベースを作るところが私の仕事で、あとは木たちが勝手に森を育んでいくことになります。
VUTAIの庭全体としては、奈良の伝統的なストーリーや奈良で発展してきた伝統野菜の農業をつないで守っていくという、施設全体のコンセプトに呼応し、「つなぎまもる杜(もり)」というコンセプトに。
木々が育ってこの地に根ざしていくことが、昔からあった古い木々をつないでいき、守っていくことになる。 ここで働く人たちが、未来につないでいく。今は植えたての若い木々も、何年後かには、こうやってつながれていくんだなっていうのがわかるような庭になっていくと思います。

私はこういう土地に根ざすプロジェクトの場合、自分が死んでも恥ずかしくない、むしろ自分が死んだ頃に良くなるような、次の世代を考えた計画をしています。樹齢の長さや樹種の選択、木の間隔など、今見えている景色も大事なのですが、もっと先を見ている感覚もあって。例えば、桜については、戦後に植えられた一般的な桜ではなく、世代を超える原種の桜を植えています。そうすることによって、この長寿の桜並木は百年後、あるいは二百年後、三百年後でも地域の人々に十分楽しんでもらえる可能性があり、将来的なチャームポイントになるのではないかなと思います。
― ここVUTAIにどのような期待をされていますか?

多くのプロジェクトが「コピーアンドペースト」になりがちな世の中で、このVUTAIは非常にオリジナリティー、独自性がある。
実際に、ここでは生産の営みが行われる、それをするのは自社の社員、しかもそれをやっているのは設計事務所が母体の会社であると。そして宿泊機能を持つ、研修機能を持つ、地域の子供たちが集える場所でもある。これほど多様な要素が重なるプロジェクトがいかに稀であるかということは、十分に理解し、当初から意図していました。
なおかつ、西嶋棟梁の伝統的な建築と私のランドスケープが、我々日本人の遺伝子のど真ん中にあるこの奈良の地で重なるということで、このVUTAIは、唯一無二の、他に類を見ないプロジェクトだなと感じています。